割られた唇の先の桃色に触れた途端、愛という機構のいかに大きいかを知った。都会の夜は狭くてひろい。一直線の道路に沿って延々と続く青信号の許容が寄せては返す、さざなみのような街。醒める背筋がぞわぞわしてあたしはあたしを思い知る。近くに聞こえる鼻息がやっすいAVみたいでサイコーにキモかったよ。思えばこの日から制服は着ていない。さよならきれいでさみしいネオン。かけた音楽は5秒で止まった。幻キラーはもういない。
人間関係はさながら、幽体離脱。あたしがセーラー服の代わりに得た真実。色々のあなたのための色々のあたしがあなたの色をすこしずぅつ、盗んで、昼も夜もかわるがわる夢みたいにあたしの軌道上を半透明のからだで過ぎ去ってゆく。やさしい虚偽。死んじゃいそうなあたしに微笑みをなげかけてあなたのもとへ駆けてしまうから、あたしだけのものはいつしか痛みだけになった。滂沱の美学とあなたの哲学。あたしの信念をどうかかなしまないで。ナイトオンザプラネット。可哀想な幽体の星間飛行は何もないからどこにも行けない。さいごの橋を渡ると帰ってくるからあたしはようやく身を起こす。からからのからっぽを満たす瑞々しい虚ろと、繋ぐ視線に交わす指。アルコール消毒が済んだらおでこでキスをします。
ここには海がおちています。あなたとあたしふたり、白波に抱かれ壊れて生まれ変わろうとしますがどうにもなりません。がたがた叫ぶ奥歯は最後の楽器です。ゆくゆくは入国できない偽物のダイヤモンドになってつまらなくいっとううつくしくなります。いつかね。君の瞳のなかに火が点った瞬間。すべてを壊してつくってみせてよ。
自殺サイトも見飽きたし君に会えたらこれからは私がこんな人間って誰にもバレずに生きてやる。あの子が落ちたから渋谷の屋上は世界一かわいい。詐欺師みたいに口の上手い同僚に騙されて破滅したい。口先だけのオム・ファタル。着払いで届いたフリルの地獄で溺れて死ぬって決めてる。キラキラした液体を飲んで飲んで吐いたあの便器の中はきっと菫のラメのかがやきを以てあたしを誘っていたので手を取った。ああそういえばガトーショコラ食べたっけってどろぬまの鈍くひかる絶望で紡ぐ甘い甘い人生は句読点打つ暇ない。
生まれかわったら光になりたい。人気ない夜の自販機のボタンとかどうかな、100年前の嘘を集めて道無き道の彼を照らす一等星、病みそうなくらい健康な病室の不健康な蛍光灯、あたしやっぱりそれらすべてに集るモコモコの蛾になってすべてのモードを許せなくありたい。きみのモデルにはバチバチに光る粒子のエフェクトをはめ込みました。惰性のにばん君がいちばん。それでもまだまだ足りないから、あなたをいっとうだいすきだなって鼓動が刻むおかしなSOS。願わくばあなたの胸元の校章に反射する光になりたかった。どう?こういうのが好きなんでしょ。あたしは銀紙をまとってきみを反射する孤独な惑星です。
ポイフルの表面の砂糖のコーティングは糖衣と言うらしい。サイダーに15分漬けるとたちまち取れてしまうそれを、タピオカソーダみたいに飲むとおいしいんですよぉと画面の先のユーチューバーが言っていた。グミソーダなんて呼称のそれはその名前の安直さまであの子のつく嘘に似ていた。加工された甘みは鮮烈さの前では無力でも、併せ飲むとそれなりにイケるのだ。気が触れそうな祈りを掻き集めてつくったそれがどうか舌がとろけるほど絶品でなんだかやるせなくてがっかりできますように。ずうっとこうしていたい心地がします。これが終わったらコンビニ行こう。狂ったスイート・ホームと今月を生き抜くために。
砂糖菓子の弾丸じゃ撃ちぬけないから。